訪問看護ステーションの稼働率とは?計算方法と適正な目安を解説
訪問看護ステーションの稼働率を把握していますか?
訪問看護ステーションの経営では、売上や訪問件数だけでなく、スタッフが訪問可能な枠をどの程度活用できているかを確認することが重要です。
「訪問件数は増えているのに利益が残らない」
「スタッフによって訪問件数に差がある」
「新しい職員を採用してよいか判断できない」
このような場合は、稼働率を計算することで、事業所の余力や人員配置の課題を把握しやすくなります。
この記事では、訪問看護ステーションにおける稼働率の考え方、計算方法、経営上の目安について解説します。
訪問看護ステーションの稼働率とは
訪問看護における稼働率とは、スタッフが訪問できる最大件数に対して、実際に何件訪問したかを示す指標です。
基本的な計算式は次のとおりです。
稼働率=実際の訪問件数÷訪問可能件数×100
例えば、1か月に120件訪問できるスタッフが、実際に100件訪問した場合は、
100件÷120件×100=約83.3%
となります。
訪問看護の稼働率には、公的に統一された計算方法や基準値が設定されているわけではありません。そのため、事業所内で計算条件を決め、毎月同じ方法で比較することが重要です。
訪問可能件数の計算方法
訪問可能件数は、次の式で計算できます。
訪問可能件数=訪問スタッフ数×月間勤務日数×1日当たりの標準訪問件数
例えば、訪問スタッフが4人、月間勤務日数が20日、1人当たり1日6件を訪問可能件数とした場合は、
4人×20日×6件=480件
となります。
この事業所が実際に400件訪問した場合の稼働率は、
400件÷480件×100=約83.3%
です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 訪問スタッフ数 | 4人 |
| 月間勤務日数 | 20日 |
| 1日当たりの標準訪問件数 | 6件 |
| 訪問可能件数 | 480件 |
| 実際の訪問件数 | 400件 |
| 稼働率 | 約83.3% |
1日当たりの標準訪問件数を決める
稼働率を計算するには、最初に「1人が1日に何件訪問できるか」を決める必要があります。
目安を決める際は、次の項目を考慮します。
- 1件当たりの訪問時間
- 訪問先までの移動時間
- 訪問記録の作成時間
- 電話対応や関係機関との連絡
- 会議や研修の時間
- オンコール対応
- 訪問エリアの広さ
- 医療依存度やケア内容
例えば、30分訪問が多く、訪問先が近い事業所と、60分訪問が多く、広範囲を移動する事業所では、適正な訪問件数が異なります。
単純に件数だけを増やすと、記録の遅れや残業、スタッフの負担増加につながる可能性があります。事業所の実態に合わせて、無理のない標準訪問件数を設定することが大切です。
稼働率の目安
訪問看護の稼働率について公的な基準はありませんが、経営管理上は次のような水準を一つの目安として考えられます。
| 稼働率 | 経営上の見方 |
|---|---|
| 60%未満 | 空き枠が多く、利用者獲得や訪問調整が必要 |
| 60~70% | 新規利用者を受け入れる余力がある |
| 70~85% | 比較的安定した稼働状況 |
| 85~90% | 高稼働。急な訪問や新規依頼への対応力に注意 |
| 90%超 | 過密状態やスタッフ負担の増加に注意 |
稼働率が低い場合でも、開設直後や採用直後であれば、必ずしも経営上の問題とは限りません。
一方、稼働率が常に90%を超えている場合は、キャンセルや予定変更があっても調整しにくく、緊急訪問、新規利用者、職員の休暇に対応できない可能性があります。
利益だけでなく、安全性と働きやすさを考慮すると、一定の余力を残すことも重要です。
※上記は経営管理上の参考目安であり、公的に定められた基準ではありません。
公的統計から見る訪問件数
厚生労働省の「令和7年度介護事業経営概況調査」によると、訪問看護の令和6年度決算における1事業所当たりの延べ訪問回数は、月平均約421.5回でした。
同調査では、常勤換算職員数は平均約8.6人、訪問1回当たりの収入は平均約8,248円となっています。
ただし、これは介護事業経営概況調査における全国平均です。医療保険と介護保険の構成、職員配置、訪問時間、加算、地域性などによって実際の数値は異なります。
平均との単純比較ではなく、自事業所の前月や過去3か月の推移と比較することが重要です。
稼働率と売上の関係
稼働率が上がると訪問件数が増えるため、基本的には売上も増加します。
訪問1件当たりの平均単価を8,200円として、訪問可能件数480件の場合を計算すると、次のようになります。
| 稼働率 | 月間訪問件数 | 月間売上の概算 |
|---|---|---|
| 60% | 288件 | 236万1,600円 |
| 70% | 336件 | 275万5,200円 |
| 80% | 384件 | 314万8,800円 |
| 85% | 408件 | 334万5,600円 |
| 90% | 432件 | 354万2,400円 |
実際の売上には、医療保険と介護保険の違い、訪問時間、各種加算、利用者負担金などが影響します。そのため、この表は単純な概算として使用してください。
売上・人件費率・利益率については、関連記事の訪問看護ステーションの売上・人件費率・利益率の目安でも詳しく解説しています。
稼働率が低くなる主な原因
利用者数が不足している
訪問可能なスタッフ数に対して利用者が少ない場合、空き枠が多くなります。紹介元別の新規依頼件数や、営業活動の状況を確認する必要があります。
スタッフを先行して採用している
利用者の増加を見込んで採用を先行した場合、一時的に稼働率が低下します。
採用する際は、「何月までに何件の訪問を担当するか」という目標を設定しておくことが重要です。
訪問時間や担当エリアに偏りがある
特定の曜日や時間帯に訪問が集中すると、事業所全体では空きがあっても、新規依頼を受けられないことがあります。
曜日別・時間帯別に空き枠を確認すると、訪問調整の課題を発見しやすくなります。
移動時間が長い
訪問先が広範囲に分散していると、勤務時間に占める移動時間が増え、訪問可能件数が減少します。
担当エリアや訪問ルートを見直すことで、スタッフの負担を増やさずに稼働率を改善できる場合があります。
キャンセルや入院が多い
利用者の入院、体調不良、家族都合などによるキャンセルも稼働率に影響します。
キャンセル件数と理由を記録し、振替訪問が可能か、空き枠をどのように活用するかを検討します。
稼働率を改善する方法
曜日・時間帯別の空き枠を見える化する
事業所全体の稼働率だけでなく、スタッフ別、曜日別、時間帯別に空き枠を管理します。
「火曜日の午後は空いている」「金曜日の午前は受け入れが難しい」といった状況が分かれば、営業先にも具体的な受け入れ情報を伝えられます。
スタッフ別に訪問件数を確認する
スタッフごとの訪問件数を確認し、担当の偏りや空き時間を調整します。
ただし、利用者の状態、緊急対応、管理業務、教育業務なども考慮し、件数だけでスタッフを評価しないことが大切です。
訪問エリアを整理する
訪問エリアを一定の範囲にまとめ、同じ地域の利用者を連続して訪問できるようにします。
移動時間が短縮されると、訪問件数だけでなく、記録時間や休憩時間も確保しやすくなります。
新規利用者と終了利用者を管理する
毎月の新規利用者数と終了利用者数を確認し、純増減を把握します。
終了者が多い月は、現在の稼働率が高くても翌月に売上が低下する可能性があります。訪問件数だけでなく、利用者数の変化も併せて確認する必要があります。
採用判断にも稼働率を活用する
稼働率は、スタッフの採用時期を判断する材料にもなります。
例えば、稼働率が80~85%以上で推移し、既存スタッフだけでは新規依頼を受けにくくなっている場合は、採用準備を検討する時期と考えられます。
一方、稼働率が60%程度で空き枠が多い場合は、採用前に利用者獲得や訪問調整を優先した方がよい場合があります。
ただし、採用には時間がかかるため、稼働率が100%になってから募集を始めると、人員不足が長期化する可能性があります。
現在の稼働率だけでなく、次の項目も併せて判断します。
- 新規依頼件数
- 利用者の終了予定
- スタッフの退職・休職予定
- オンコール体制
- 土日祝日の対応体制
- 医療依存度の高い利用者の増減
- 採用から入職までに必要な期間
毎月確認したい稼働指標
訪問看護ステーションでは、次の項目を毎月確認することをおすすめします。
- 事業所全体の稼働率
- スタッフ別の稼働率
- 曜日・時間帯別の空き枠
- 医療保険・介護保険別の訪問件数
- 訪問1件当たりの平均単価
- キャンセル件数と振替件数
- 新規利用者数
- 終了利用者数
- 利用者の純増減
- スタッフ1人当たりの訪問件数
- 移動時間
- 残業時間
これらを売上、人件費率、利益率と一緒に確認することで、経営状況をより正確に把握できます。
まとめ
訪問看護ステーションの稼働率は、スタッフが訪問できる枠をどの程度活用できているかを示す経営指標です。
基本的な計算式は、
稼働率=実際の訪問件数÷訪問可能件数×100
です。
経営管理上は、70~85%程度を一つの目安としながら、事業所の訪問時間、移動距離、職員構成などに合わせて適正な水準を決めます。
稼働率が低い場合は、利用者数、訪問調整、移動時間、キャンセルなどを確認します。一方、稼働率が高すぎる場合は、スタッフの負担や緊急対応、新規依頼を受け入れる余力にも注意が必要です。
単月の数値だけで判断せず、毎月同じ条件で計算し、3か月から6か月程度の推移を確認していきましょう。
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※本記事は一般的な経営管理の考え方を紹介するものであり、記載した稼働率は公的な基準ではありません。実際の目標設定は、事業所の人員体制、訪問内容、地域性などを考慮して判断してください。

