訪問看護ステーションの損益分岐点とは?必要な売上・訪問件数の計算方法

訪問看護ステーションを経営していると、「毎月いくら売り上げれば赤字にならないのか」「何件訪問すれば利益が残るのか」が分かりにくいことがあります。

売上だけを確認していても、人件費や事務所家賃、車両費、社会保険料などの支出が大きければ、利益は残りません。

そこで重要になるのが「損益分岐点」です。

本記事では、訪問看護ステーションの損益分岐点について、必要な月間売上、訪問件数、スタッフ1人当たりの訪問件数まで具体例を使って解説します。

訪問看護ステーションの損益分岐点とは

損益分岐点とは、売上と費用が等しくなり、利益がちょうど0円になる水準です。

厳密な損益分岐点売上高は、次の式で計算します。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

限界利益率=1-変動費率

固定費には人件費、家賃、システム利用料など、売上の増減にかかわらず発生する費用を含めます。変動費には、訪問件数や売上に応じて増減する材料費、燃料費などを含めます。

ただし、訪問看護ステーションでは人件費を中心とした固定的な支出の割合が大きいため、毎月の費用合計を「最低限必要な売上」として確認する簡易的な方法も実務上は有効です。

例えば、現在の運営規模における月間費用が合計360万円であれば、まず月間売上360万円を赤字回避の目安として管理します。

ただし、実際の経営では返戻、入金時期のずれ、キャンセル、採用費、車両修繕費なども発生します。そのため、損益分岐点を超えるだけでなく、一定の利益を確保できる売上目標を設定することが大切です。

損益分岐点に含める費用

損益分岐点を計算する際は、毎月発生する費用をできるだけ漏れなく集計します。

主な費用は次のとおりです。

  • 給与・役員報酬
  • 賞与引当金
  • 会社負担の社会保険料
  • 事務所家賃
  • 車両費・駐車場代
  • ガソリン代・有料道路代
  • 通信費・システム利用料
  • 医療材料・事務用品費
  • 税理士・社労士などの専門家費用
  • 採用費・広告費
  • 保険料
  • 借入金の利息
  • その他の管理費

給与だけを人件費として計算すると、会社負担の社会保険料や賞与原資が抜けることがあります。実際に事業所から支出される金額を基準に集計することが重要です。

簡易計算による月間売上の目安

ここでは、1か月の費用が次のような訪問看護ステーションを例に計算します。

費用項目月額
人件費・法定福利費240万円
事務所家賃15万円
車両費・駐車場代30万円
通信費・システム利用料15万円
医療材料・専門家費用20万円
採用費・その他の管理費40万円
合計360万円

この場合、赤字回避のために最低限必要な月間売上の目安は360万円です。

月間売上360万円では、利益は0円です。突発的な修繕費やキャンセル、返戻などが発生すると赤字になるため、実際の売上目標は損益分岐点より高く設定する必要があります。

黒字化に必要な訪問件数の計算方法

必要な訪問件数は、設定した売上目標を平均訪問単価で割って計算します。

必要訪問件数=売上目標÷平均訪問単価

平均訪問単価は、月間売上を実際の訪問件数で割って算出します。医療保険・介護保険の割合や加算によって変動するため、自事業所の実績を使用することが重要です。

ここでは、平均訪問単価を8,200円として計算します。

360万円÷8,200円=約439件

端数を切り上げると、赤字を回避するためには月440件程度の訪問が必要です。

月20日稼働の場合は、次のようになります。

440件÷20日=1日22件

訪問スタッフが4人の場合は、1人当たりの目安は次のとおりです。

22件÷4人=1人1日5.5件

したがって、この条件ではスタッフ1人当たり1日5~6件の訪問が、簡易的な赤字回避の目安になります。

利益率10%を確保する売上目標

損益分岐点を超えるだけでなく、継続的な経営には一定の利益が必要です。

利益率10%を確保したい場合は、次の式で売上目標を計算します。

売上目標=月間費用÷(1-目標利益率)

月間費用が360万円の場合は、次のとおりです。

360万円÷0.9=400万円

月間売上400万円であれば、費用360万円、利益40万円となり、利益率は10%です。

平均訪問単価8,200円の場合、必要な訪問件数は次のとおりです。

400万円÷8,200円=約488件

月20日稼働では1日約24.4件、訪問スタッフ4人では1人1日約6.1件が目安になります。

損益分岐点が高くなる主な原因

必要な売上や訪問件数が多すぎる場合は、単に訪問件数を増やすだけでなく、費用構造や運営方法を確認する必要があります。

主な原因は次のとおりです。

人員配置が売上規模に合っていない

利用者数や訪問件数に対して職員数が多い場合、人件費が先行して利益が残りにくくなります。採用時は、現在の訪問件数だけでなく、今後の紹介見込みや営業状況も踏まえて判断することが重要です。

稼働率が低い

勤務時間に対して訪問時間が少ない場合、売上につながらない時間が増えます。移動距離、記録時間、空き時間、キャンセルなどを確認し、訪問可能件数と実績を比較する必要があります。

平均訪問単価が低い

医療保険・介護保険の割合、訪問時間、利用者の状態、各種加算によって平均訪問単価は変わります。単価だけを上げるのではなく、算定要件を満たしている加算の請求漏れがないか確認することも大切です。

固定費が大きい

家賃、車両費、システム利用料などが事業規模に対して大きいと、損益分岐点も高くなります。契約内容や使用状況を定期的に見直しましょう。

毎月確認したい経営指標

損益分岐点は一度計算して終わりではありません。少なくとも毎月、次の数値を確認します。

  • 月間売上
  • 月間費用
  • 営業利益・利益率
  • 訪問件数
  • 平均訪問単価
  • スタッフ1人当たりの訪問件数
  • 人件費率
  • 稼働率
  • キャンセル件数
  • 現預金残高

売上・人件費率・利益率の考え方については、「訪問看護ステーションの売上・人件費率・利益率の目安」で詳しく解説しています。

稼働率の計算方法については、「訪問看護ステーションの稼働率とは?計算方法と適正な目安を解説」も参考にしてください。

まとめ

訪問看護ステーションの損益分岐点を把握すると、赤字を回避するために必要な売上と訪問件数を具体的に確認できます。

計算する際は、人件費だけでなく、法定福利費、家賃、車両費、システム利用料、採用費なども含めて費用を整理することが重要です。

また、損益分岐点を超えるだけでは、急な支出や売上減少に対応できません。利益率10%などの目標を設定し、必要売上、訪問件数、スタッフ1人当たりの訪問件数へ落とし込んで管理しましょう。

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※本記事は一般的な経営管理の考え方を紹介するものであり、個別の経営判断、会計・税務上の判断を保証するものではありません。具体的な会計・税務処理については、税理士などの専門家へご確認ください。