訪問看護ステーションの開業資金はいくら?初期費用・運転資金の目安

訪問看護ステーションの開業を検討する際、「開業までにいくら必要なのか」「売上が入金されるまでの運転資金をどの程度用意すればよいのか」は、特に重要な問題です。

訪問看護は大規模な設備を必要としない一方、指定基準を満たす人員の確保が必要です。売上が安定する前から給与、社会保険料、家賃、車両費などが発生するため、初期費用だけでなく運転資金も含めて準備しなければなりません。

本記事では、訪問看護ステーションの開業に必要な初期費用と運転資金について、具体的なモデルケースを使って解説します。

訪問看護ステーションの開業資金の目安

訪問看護ステーションの開業資金は、一般的に次の2つに分けて考えます。

  • 開業準備に必要な初期費用
  • 開業後の支払いに備える運転資金

小規模に開始する場合でも、合計で800万円から1,500万円程度を準備するケースがあります。採用人数、給与水準、車両の購入・リース、事務所の契約条件などによっては、さらに多くの資金が必要です。

この金額は公的に定められた基準ではありません。実際には、自事業所の事業計画と資金繰り表を作成して判断する必要があります。

訪問看護ステーションの主な初期費用

開業前に発生する主な費用は次のとおりです。

項目費用の目安
法人設立・各種手続き20万~50万円
事務所契約・内装・什器30万~150万円
パソコン・電話・通信環境20万~60万円
車両・自転車・移動用具50万~300万円
電子カルテ・請求システム10万~50万円
医療材料・備品・ユニフォーム10万~30万円
採用・求人広告30万~150万円
保険・広告・ホームページ等20万~80万円
合計190万~870万円

上記はあくまで目安です。中古車やリースを利用する、既存物件を活用するなど、開始方法によって初期費用を抑えることもできます。

法人設立・各種手続き

法人設立では、登録免許税、定款認証、専門家への依頼費用などが発生します。株式会社と合同会社では費用が異なるため、運営方針や将来の事業展開も踏まえて法人形態を検討します。

また、指定申請、社会保険、労働保険、税務関係などの手続きも必要です。専門家へ依頼する場合は、その報酬も予算に含めます。

事務所の契約・設備

訪問看護ステーションには、事業運営に必要な広さを有する専用の事務室と、必要な設備・備品が求められます。

物件契約時には、敷金、礼金、仲介手数料、保証料、前家賃などが必要です。机、椅子、書庫、鍵付き保管庫、電話、インターネット環境などの費用も計上します。

物件を契約する前に、予定している間取りや設備で指定要件を満たせるか、管轄する自治体などへ事前相談することが重要です。

車両・移動手段

訪問エリアに応じて、自動車、原付バイク、電動自転車などを準備します。

車両を購入する場合は初期費用が大きくなります。リースを利用する場合は初期費用を抑えられますが、毎月の固定費が増えるため、総支払額も確認しましょう。

車両本体だけでなく、駐車場、任意保険、車検、税金、燃料費、メンテナンス費用も必要です。

ICT機器・請求システム

訪問記録や請求業務を行うため、パソコン、スマートフォン、タブレット、プリンター、インターネット環境などを準備します。

電子カルテ・請求システムは、初期設定費用のほか、月額利用料も発生します。利用者数や職員数が増えた場合の料金体系も確認して選定することが大切です。

採用費

訪問看護ステーションでは、開業前から必要な職員を確保する必要があります。

求人媒体、人材紹介会社、採用ページ、求人広告などを利用すると、まとまった採用費が発生することがあります。採用後のユニフォーム、健康診断、研修などの費用も計上しておきましょう。

開業後に必要な運転資金

開業資金を考える際、初期費用よりも注意したいのが運転資金です。

開業後すぐに利用者数が増えるとは限らず、サービスを提供してから売上が入金されるまでにも時間がかかります。一方、給与、社会保険料、家賃、車両費などは売上が少ない段階から支払わなければなりません。

そのため、少なくとも4~6か月分程度の運転資金を準備しておくと、資金繰りに余裕を持ちやすくなります。

人件費

指定訪問看護ステーションでは、看護職員を常勤換算2.5人以上配置し、そのうち1人は常勤であることが求められます。

また、原則として保健師、助産師または看護師である常勤の管理者を配置する必要があります。

給与だけでなく、事業者負担の社会保険料、通勤手当、オンコール手当、賞与原資、健康診断、研修費なども含めて人件費を計算します。

出典:厚生労働省「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準

毎月発生する固定的な費用

人件費以外にも、次のような費用が毎月発生します。

  • 事務所家賃
  • 車両リース・駐車場代
  • ガソリン代
  • 通信費
  • 電子カルテ・請求システム利用料
  • 保険料
  • 税理士・社労士等の専門家費用
  • 医療材料・事務用品費
  • 採用費・営業費
  • 借入金の返済

売上が計画を下回った場合も支払いを継続できるよう、余裕を持った資金計画が必要です。

運転資金のモデルケース

ここでは、開業時の月間支出が次のような事業所を例にします。

項目月額
給与・法定福利費200万円
家賃・水道光熱費20万円
車両・駐車場・燃料費30万円
通信・システム利用料15万円
採用・営業費20万円
医療材料・その他の経費15万円
合計300万円

月間支出が300万円の場合、4か月分の運転資金は次のとおりです。

300万円×4か月=1,200万円

初期費用を300万円とすると、準備する資金の合計は次のようになります。

初期費用300万円+運転資金1,200万円=1,500万円

実際には開業後の売上も入りますが、利用者数の増加が遅れた場合や採用費が追加で発生した場合に備え、複数の売上パターンで資金繰りを確認することが重要です。

開業資金を調達する方法

開業資金は、自己資金だけでなく、金融機関からの融資などを組み合わせて準備します。

自己資金

自己資金が多いほど、借入額と毎月の返済負担を抑えられます。ただし、開業費用に自己資金をすべて使うと、予想外の支出に対応できません。

個人の生活費と事業資金を分け、開業後も一定の現預金が残る計画にしましょう。

日本政策金融公庫などの創業融資

日本政策金融公庫では、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方などを対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」が案内されています。

設備資金や運転資金に利用できますが、融資には審査があり、希望どおりの金額や条件で利用できるとは限りません。制度内容や利率は変更される場合があるため、申込み時に最新情報を確認してください。

自治体・金融機関の制度融資

自治体、信用保証協会、金融機関が連携した制度融資を利用できる場合があります。

対象者、金利、保証料、融資上限などは地域によって異なります。開業予定地の自治体、商工会議所、金融機関などへ早めに相談しましょう。

補助金・助成金

IT導入、採用、人材育成、職場環境改善などに利用できる補助金・助成金がある場合があります。

ただし、補助金は原則として後払いとなるものが多く、申請前の契約や購入が対象外になる場合もあります。補助金を当初の資金繰りに含めすぎず、交付要件と対象期間を確認して活用することが重要です。

資金不足を防ぐためのポイント

開業前に月別の資金繰り表を作る

開業後12か月程度について、利用者数、訪問件数、売上、入金、人件費、固定費、借入返済などを月別に整理します。

売上が計画より少ない場合も想定し、標準的なケースだけでなく、慎重なケースでも資金が不足しないか確認しましょう。

採用人数と採用時期を調整する

必要な人員基準は満たしつつ、利用者数の増加に合わせて採用時期を検討します。

採用を遅らせすぎると指定要件やサービス提供に影響しますが、利用者数に対して過剰な人員配置になると人件費率が高くなります。

初期費用だけで判断しない

物件や車両を安く準備できても、開業後の人件費や固定費を支払えなければ事業を継続できません。

「開業できる金額」ではなく、「売上が安定するまで事業を継続できる金額」を準備することが大切です。

開業後の売上・人件費率・利益率については、「訪問看護ステーションの売上・人件費率・利益率の目安」で詳しく解説しています。
必要売上と訪問件数の計算については、「訪問看護ステーションの損益分岐点とは?必要な売上・訪問件数の計算方法」も参考にしてください。

まとめ

訪問看護ステーションの開業では、事務所、車両、ICT機器、採用などの初期費用に加え、開業後4~6か月程度の運転資金を検討する必要があります。

特に人件費は開業前後から大きな支出となるため、給与だけでなく、法定福利費、手当、採用費なども含めて計算します。

必要資金は事業所ごとに異なります。利用者数と訪問件数の計画、売上の入金時期、採用計画を月別に整理し、複数のシナリオで資金繰りを確認しましょう。

訪問看護の開業準備をご相談ください

みなみ訪問リハビリサービスでは、訪問看護ステーションの開業・経営経験をもとに、事業計画、売上目標、人件費、採用、指定申請準備などの整理を支援しています。

「必要資金を具体的に計算したい」「開業後の売上と資金繰りが不安」「採用人数や給与水準を検討したい」といった場合は、お問い合わせフォームよりご相談ください。

※本記事の金額は一般的なモデルケースであり、必要資金や融資の実行を保証するものではありません。融資、会計、税務、労務、指定申請などについては、金融機関、自治体、税理士、社会保険労務士、行政書士などの関係機関・専門家へご確認ください。